くらしの現場レポート

コロナで変わった日常に新たな気付き
ニューノーマルな暮らしとつながるSDGs

2021.09.07 

最近、テレビやインターネットなどで「SDGs」という言葉をよく目にするようになりました。 SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goalsの略)は、2015年国連サミットで採択されたもので、暮らしと地球環境を守りながら、社会や経済の問題を解決し、豊かで幸せな未来を実現するための17の目標で構成されています。目標達成のゴールとされた2030年まで、残すところ10年を切った今、SDGsへの認知や関心が大きく高まっていることがわかりました。また、コロナ禍に対応する暮らしの中で、SDGsにつながるおもいや行動もみられています。私たちのニューノーマルな暮らしとSDGsのつながりについてレポートします。

SDGs17の目標

メディアの影響で、SDGsの認知度が上昇

SDGsの認知度(「詳しい内容まで知っている」「一部の内容は知っている」「見たことがある、聞いたことがある」の計)について、2019年と2020年の調査結果を比べると、未既婚男女、いずれも増加しています。

特に20~30代未婚女性の認知度は、27%から55%へと上昇幅が大きいことが目を引きます。また、既婚男性の認知度が65%と高いのは、ビジネスなどでSDGsにふれる機会が多いであろうことが理由に考えられます。

さらに、SDGsの内容まで「詳しく知っている」「一部知っている」割合も、未既婚男女それぞれで上昇していることから、SDGsへの理解も深まっていることがうかがえます。

  • SDGsを知っていますか?のグラフ 20~60代既婚男女 各500人 2019年、2020年 花王 生活者研究部調べ

  • SDGsを知っていますか?のグラフ 20~30代未婚男女 各200人 2019年、2020年 花王 生活者研究部調べ

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SDGs認知度の上昇には、メディア報道の影響も大きいようです。2018年に国連が設立した「SDGメディア・コンパクト」という国際アライアンス組織に日本のメディア各社も加盟、テレビ各局がSDGsの目標や世界での取り組みを紹介したり、子どもと一緒に学べるクイズ形式の番組を放送したりするようになりました。

また、ふだんは身近な話題を扱うファッション系女性誌がSDGsを特集するなど、ライフスタイルとしてSDGsを取り上げる情報発信も増えています。企業や団体の広告でもSDGsと結び付けた内容を多く目にするようになりました。このように、SDGsの情報に触れる機会が増えたことは、多くの人がSDGsを知り、関心を持つきっかけの一つになったようです。

朝の番組やCMでSDGsウィーク等の話題を見た。Mr.ビーンの映画を作った人がSDGsのコミュニティ戦略を作っていると聞いた。(30代、既婚女性)

SDGsはテレビや雑誌などで見る機会が増えた。個人のブログでも月経カップ使用で生理用品のゴミが減らせるなどと書いてあった。(40代、既婚女性)

YouTubeとニュース系のスマホアプリを見るようになって、ジェンダーのトイレ問題とか気になるようになった。(60代、既婚女性)

SDGsの17目標への関心も幅広く

SDGsの17目標で、関心を持つ項目を調査したところ、どの属性でも「①貧困をなくそう」「③すべての人に健康と福祉を」の関心度が高いことがわかりました。

コロナ禍による衛生意識の高まりや世界の衛生事情を目の当たりにしたことなどもあり、「②飢餓をゼロに」「⑥安全な水とトイレを世界中に」「⑯平和と公正をすべての人に」も含め、日本に住んでいるとあまり危機意識を感じなかった目標も上位に挙がりました。

地球環境に関する「⑬気候変動に具体的な対策を」「⑭海の豊かさを守ろう」「⑮陸の豊かさも守ろう」にも高い関心がみられます。

また、20~30代未婚男女では、「⑧働きがいも経済成長も」「⑩人や国の不平等をなくそう」も関心が高く、自分の身近なことに関連する目標から、日本では実感しにくいけれど世界全体で取り組むべき目標まで、関心の幅が広がっている様子がうかがえます。

SDGs17目標の関心度の図 20〜60代既婚男女(各500人)、20〜30代未婚男女(各200人)  2020年 花王 生活者研究部調べ

SDGs17目標の関心度の図 20〜60代既婚男女(各500人)、20〜30代未婚男女(各200人)  2020年 花王 生活者研究部調べ

SDGs17目標の関心度の図 20〜60代既婚男女(各500人)、20〜30代未婚男女(各200人)  2020年 花王 生活者研究部調べ

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ニューノーマルな日常とSDGsのつながり

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下では、外出自粛が要請され、手洗い・マスク着用の励行、三密を避ける、仕事ではテレワーク・在宅勤務の推奨など、私たちもさまざまな対応を強いられました。

オンラインインタビューで、コロナ禍の暮らしについて聞いてみると、「自分の感染対策がまわりの人のためになる」「在宅勤務で家事や健康管理に時間を使える」「デリバリーの利用で出たごみをきっかけに環境を意識するようになった」など、新たな気付きを得ている声もありました。コロナ禍のニューノーマルな暮らしに対応するため生活を見直した結果、自分でも気付かないうちに、SDGsにもつながる行動を実践し始めている様子がみられました。

3すべての人に健康と福祉を

感染症は、1人がかかるとみんながかかってしまうので、こまめに手洗い、うがいをして、「小さなことでもやらなければいけない」と子どもにも前より強く言うようになった。(20代、既婚女性)

5ジェンダー平等を実現しよう

コロナで、きれい好きの夫が、気になるところは徹底的に掃除してくれるようになり、夫がいろいろ家事をしてくれるようになった。(30代、既婚女性)

8働きがいも経済成長も

在宅勤務だと昼休みをちゃんと取れる、自由に時間を使えるので家事もこなせる。昼休みをもっと家事や健康維持のための時間にしたい。(30代、既婚男性)

12つくる責任つかう責任

一番気になるのは、使い捨てマスク。洗えるマスクにしようかとも思う。見かけるのは使い捨ての方が多いので、どうしようか考えている。(40代、既婚女性)

14海の豊かさを守ろう

デリバリーを利用すると容器のごみが気になるので、紙の容器や環境を意識した容器などがあったらそっちを選ぶ。(30代、既婚女性)

また、コロナ禍では、支援や寄付の形も大きく変化しました。

医療従事者にエールを送る活動が広がったり、営業自粛により経済的に大きな打撃を受けた飲食業や生産業者に対する「応援消費」など、インターネットを介したさまざまな支援や寄付の仕組みが生まれました。

オンラインを活用することで、おもいを共有しやすく、しかも行動に移しやすくなりました。
例えば、個人少額型クラウドファンディングでは、一人では少額の寄付でもみんなの力を合わせることで支援が実現できるなど、自分一人の力が目に見える形で社会貢献につながる体験になったようです。

洋服を寄付するサイトを見つけ、「送料は自己負担でも、困っている国のワクチン代とかになった」という利用した人の声を見て、誰かの役に立つならいいかなと思いやってみた。( 30代、既婚女性)

寄付やクラウドファンディングは、お小遣いに余裕がある範囲でやっていこうと。家計からの支出を考えるよりは、自分のできることでやっていきたい。( 30代、既婚男性)

コロナで落ち込んでも仕方がない。困っている人の助けになればと思い、断捨離で出た不用品をリサイクルに出し、収益を寄付しようと思っている。 (40代、既婚女性)

SDGsを意識して暮らしを見直してみる

新型コロナウイルスの流行によって、さまざまな対応を余儀なくされた経験は、負の側面ばかりだけでなく、私たちの暮らしにプラスの変化ももたらしたようです。

感染予防対策やテレワーク、外出自粛などの大きな変化を伴うニューノーマルな暮らしの中で、私たちはあらためて「大切なのは何か」を考える必要に迫られました。主に自分や家族など身近な人を守るために変えた行動の中には、SDGsの目標につながるものが多くありました。

SDGsの実現のために何ができるか?と考えるとハードルが高く見えますが、日常の身近なことを入り口に連想し、暮らしを少し変えてみるのはそれほど難しいことでないのかもしれません。

SDGsで守ろうとしているのは、私たちや子どもたちが暮らす未来の地球。一人ひとりが1つでもSDGsの目標実現につながることを意識して、行動を心がけていきたいですね。

調査概要

「環境・SDGsについての意識実態」
◎2019年8月/インターネット調査/首都圏在住20~60代既婚男女、20~30代未婚男女/男性700人、女性700人
◎2020年10月/インターネット調査/首都圏在住20~60代既婚男女、20~30代未婚男女/男性700人、女性700人

「環境や暮らしについての意識実態」
◎2021年6月/オンラインインタビュー調査/首都圏在住 30~60代女性/6人

「美の予見調査」
◎2020年4~5月/オンラインインタビュー調査/2018~19年 都内街頭インタビュー対象者 美容や身だしなみに関心の高い20~50代女性/8人

「在宅勤務の暮らしと家事」
◎2020年8月/オンラインインタビュー調査/首都圏在住30~40代既婚男女 新型コロナをきっかけに在宅勤務経験者/6人

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